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FOCUS

Noism芸術監督・金森穣インタビュー Noism1新作『マッチ売りの話』+『passacaglia』

 Noism1の新作は相対する2作品を上演する。第1部として上演する『マッチ売りの話』はアンデルセンの名作童話「マッチ売りの少女」と、劇作家・別役実の戯曲「マッチ売りの少女」をもとに、Noism芸術監督の金森穣がオリジナルの物語舞踊を創作。2015年の近代童話劇シリーズvol.1『箱入り娘』に続く第2弾。

 ここで少し、劇作家・別役実の「マッチ売りの少女」に着目したい。
「ある老夫婦のもとに突然ひとりの女性が現れ、『私は7歳のときにマッチを売って、自分のスカートの中を覗かせていた。それを教えたのは、あなたである、あなた達は私の両親なのではないか』と衝撃の告白をはじめる…」というけっしてお子様向けでないお話。
 金森は、「2つの異なる時代に創作された『マッチ売りの少女』という物語を通して、自己と他者、親と子、社会的格差など、人間が抱える普遍的な問題を意識せざるを得ない」という。この2つの作品をどのように展開させるのか、芸術監督金森の手腕に期待がかかる。

 そして、第2部『passacaglia』では、17世紀に作曲された宗教音楽「passacaglia(パッサカリア)」を用いた新作を同時上演する。しかしながら、単なるダブルビルの扱いではないところに注目したい。『passacaglia』は、ハインリヒ・ビーバーが作曲した「パッサカリア」と、Noismの本拠地と同じ新潟出身・在住の現代音楽家である福島諭のオリジナル曲を用いて創作される抽象的な舞踊作品。

 本作の見どころのひとつに、『マッチ売りの話』と『passacaglia』で「ひとつの作品」として構成されている点がある。「物語」「抽象」の相反する2つの表現方法を用いることで、Noismの多様性が見て取れるだろう。ふたつの異なるアプローチから「同じテーマで結ばれたひとつの作品」を見せることで、解りやすい作品を届けるという”やさしさ”を排除し、「複雑な現代社会に複雑なまま向き合う」という意志の込められた意欲的な作品だ。

 2017年1月20日の初日を控え、金森穣がインタビューに応じてくれた。
 

 ―4年ごとに3部作を制作しているが、2部作で1つの作品を製作した経緯は?

「何年ごとに~」という特別な意味はありません。いま私が表現したいことを表現する上で、今回はこの構成が適していると考えたのです。創作における法則(ある種の傾向)は、あくまでも事後的に第三者が見出すものであって、私はそういった法則、すなわちルーティーンに陥らないように、まるで自分の陰から逃げようとするかのように走り続けているのです。

 ―2014年の「ASU~不可視への献身」ではアジアのルーツの着目し、アルタイの音楽を起用。本公演でハインリッヒ・ビーバーの楽曲「パッサカリア」を取り上げた理由としては?

 今回用いているハインリヒ・ビーバーの楽曲に関しては、それが「ロザリオのソナタ」という宗教音楽の最後の曲であることにこそ意味があります。その楽曲に着目した理由は、この楽曲だけが他の楽曲と異なり、聖母マリアの秘蹟(キリストの物語)とは別の、独立した楽曲であることです。そこに私は作曲家ビーバーの、極めて個人的な信仰のようなものを感じたのです。
 また、「パッサカリア」という音楽形式名がスペイン語で「歩くように」という意味を持つことは、この音楽を振り付ける上で重要なキー・ワードになっています。

―以前、「綺麗だった」「面白かった」だけで終わりたくないというコメントがあったが、その意味するところは?
 
「楽しい」という体験が深く心に刻まれることもあるでしょう。私はただ、その言葉が何であれ、表面的な感想で終わってしまうような体験では、こちらの力不足であると言いたかったのだと思います。
 いずれにしても私は、観客から望ましい感想を得るために創作しているのではありません。その感想が何であれ、数十分/数時間の体験として、観客の記憶に深く刻まれる作品を創作したいと願っています。

 ― 子供のときに一番記憶に残った「童話」を教えてもらえますか?

「おしいれのぼうけん」(*)が記憶に残っています。その理由はきっと、姉とふたりで上下に分かれて押入れベッドに寝ていたからでしょう。

 幼いころの思い出も明かしてくれたが、「自分で自分に驚きたい」という創作意欲を燃やし続け、「願いは叶ったかどうかではなく、願うことこそが重要」と語る芸術監督・金森穣。従来のダブルビルを超えた、新たなNoismの誕生を待ち望みたい。

 

近代童話劇シリーズvol.1『箱入り娘』(2015年)c)Kishin Shinoyama

近代童話劇シリーズvol.1『箱入り娘』(2015年)c)Kishin Shinoyama

近代童話劇シリーズvol.1『箱入り娘』(2015年)c)Kishin Shinoyama

近代童話劇シリーズvol.1『箱入り娘』(2015年)c)Kishin Shinoyama




*「おしいれのぼうけん」:ふたりの男の子が保育園の先生に叱られ押し入れに閉じ込められると、
 地下世界に住む怖いネズミばあさんと遭遇。ふたりで助け合いながら立ち向かってゆく冒険物語。
 古田足日・田畑精一 作(童心社、1974年)

公演情報

Noism1 近代童話劇シリーズvol.2『マッチ売りの話』『passacaglia』
新潟公演:2017年1/20(金)~29(日)、2/18(土)、20(月)、24(金)~26(日)
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 スタジオB
埼玉公演:2017年2/9(木)~12(日)彩の国さいたま芸術劇場 小ホール
http://noism.jp/match_passacaglia/