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芸術監督金森穣インタビュー〈Noism1+Noism0 森優貴 / 金森穣Double Bill公演〉

 日本で唯一の公共劇場専属舞踊団として2004年に発足され、2020年で16年目を迎えるダンスカンパニー、Noism。今後も新潟市との提携が存続されるか懸念の声もあったが、ひとまず2022年までの継続が確定。第6期となる2020年からは、「Noism Company Niigata」の新名称で挑むことになり、仁多見浩りゅーとぴあ支配人のもと、10月24日に都内で記者会見が行われた。
 

Photo:Kishin Shinoyama


 新たなスタートに向けて芸術監督の金森穣曰く、
 「現在Noismは、舞踊家が私を含めて22人在籍していますが、少規模の公演にも対応できるよう、”Noism0”を常設することにしました。
 今後はより多角的に活動していきながら、新潟市民へこれまで以上に活動をひらいていきます。オープンクラスを開講することでNoismの存在をより身近に感じてもらいたい。毎朝トレーニングしているNoism独自のバレエ・メソッドを、新潟市の方達にもシェアできればと考えています」

 新体制で臨む、Noism Compay Niigataの第一作目は、昨シーズンまでレーゲンスブルク歌劇場ダンスカンパニーで芸術監督を務めた森優貴の帰国後初の新作を発表。金森穣芸術監督による新作では自身のソロ出演もあり、見逃せないダブルビル公演となる。

 「約8年ぶりに外部からの振付家を招くことになりました。2年前に優貴にNoism2のゲスト振付を打診したのですが、その時にはスケジュールが上手く合わず、改めて機会を探っていたところ、ドイツでの芸術監督を辞任する意向を聞きました。一度は止めたのですが(笑)、辞めるのなら、Noism1で振付するのはどうかと提案しました」

 その森の新作『Farben』(ファルベン)は、「もしも、突然『色彩』が消えてしまったら、あなたは何を感じますか?」と私たちに問いかける作品となっており、井関佐和子(Noism0)とNoism1の出演が決定。

「この前リハーサルの様子を少し見ましたが、ものすごいスピードで進んでいます。
 優貴の前に進むパワーはすごい。私は立ち止まって考えることも多いのですが、彼は立ち止まらない。泳ぎ続けないと死んじゃうんじゃないかと、“カツオ”ってあだ名をつけて呼んでいます(笑)。とにかくすごいエネルギーを持っています」
 今年の9月29日には、金森がホストを務める公開講座「柳都会」に森がゲストに招かれ、トークイベントが展開されたが、ここでも二人の厚い信頼関係を思わせた。

 そして、金森自身は「シネマトダンス―3つの小品」と題した新作を発表する。
「『シネマトダンス』は、シネマトグラフィ(フランス語)とダンスをかけあわせた造語です。映像技術を用いた上で舞踊の本質を表現できないかと考えました。1本目の『クロノスカイロス1』のテーマは”時間”です。「クロノス」と「カイロス」はいずれも「時」を表すギリシア語で、ギリシア神話に出てくる神様の名前です。それら2つを合わせた造語をタイトルにしています。

 現在Noismが置かれている状況も、“時間”が無関係でないと言えるかもしれませんね。
 音楽はバッハの超絶技巧を使います。創作のインスピレーションは、音楽から得ることも多いですが、ふと思いついたこと、直面している問題、書物や映画などすべてと言えます。音楽の選び方は直感です。音楽を後から探すときもありますね」
 
 2本目の『夏の名残のバラ』の誕生エピソードにも心動かされる。
「あるツアー公演中の劇場で目にした本番前の井関佐和子の姿がとても美しかった。本番直前は誰もがものすごく孤独です。舞台に出るのは怖いし不安です。彼女は本番に向けて何かを考えながら、たんたんと準備を進めていたのだろうけど、静かに椅子に座しているその姿から舞台人としてのあらゆる想いと覚悟が滲み出していて、美しかった。その姿からインスピレーションを得ました。
 佐和子も40歳になり、一人のアーティストとして円熟度が増しています。私が創作を続ける限り、一緒に仕事をしたいと思ってくれていると思いますが、お互い自分を超えたいと願い、創作に打ち込んでいるわけだから、アーティスト同士の闘いと言えるのかもしれません。私自身も、今持っているスキルをもっと超えたい、彼女もそれを期待している。だから大変なんですよ(笑)」
 
 そして3本目の新作、『FratresⅡ』。 ソロで踊ることになった経緯は?
 「じつは、来年『FratresⅢ』を発表する予定です。昨夏上演した『FratresⅠ』が群舞、Ⅱがソロ、そしてⅢで群舞とソロを合わせた構成で上演します。
 自作自演するのは2年前から考えていたことです。活動を続ける中で、少し自分を見失いそうな時期でもありました。だからこそ今の自分の身体に向き合い、集団を率いてくことの意義、そして、もう一度自分自身と向き合って、自分にとっての舞踊とは何かを問いかけたいと思います」
 
 2020年に16年目を迎えるにあたり、改めてこれまでを振り返ってみて、もっとも苦労した出来事や嬉しい記憶は?
「良いことも悪いことも、やはり人間関係は大きいです。すべてのことは人間関係につながるわけですから。でも、舞踊家がバッと花開いた瞬間に出合ったときは特に嬉しい。誰かからかけられて嬉しかった言葉は特にないですね。言葉ではなく、その人のまなざしや身体から、自分への想いが伝わってくる。その笑顔から、自分を信じることにもつながる。
 
 記憶している言葉で言えば、ほとんどが否定的なものですね。『才能ない』『将来性はなし』『向いてない』など数えられないぐらいある。でも、それが反骨心になっているし、原動力になっていると言えるのかもしれないです」

 18歳から振付家として始動し、20歳でプロデビューされましたが、常に根幹に流れるテーマはあるのでしょうか?
「私の作品は基本的に暗いですね。ずっと言われてきたことなんだけど(笑)。あまりポジティブな作品はないかな。ネガティブなものをどう受け止めて、そこからどう生きてゆくかがテーマだから、いつも悲しかったり、怖かったり、そういう感情から作品が生まれる。特に意識してというわけではないんですが。
 私にとっての恐怖は……たくさんありすぎる。死ぬことも怖いし、孤独も、人を愛することも怖い。人から無視されることも怖いし、色々ありますよ(笑)」

 今後、これだけは挑戦したいことはありますか?
「強いて言うなら、大きな作品をつくりたいです。寄せ集めのメンバーではなく、Noism0、Noism1、Noism2、そしてスクール生…と同じ身体性や理念を共有する集団での、大劇場での作品。今の体制を続けることも必死だけど…いつか実現したい夢ですね。」

金森穣演出振付『FratresⅠ』Photo:Kishin Shinoyama

https://twitter.com/dancerssupport/with_replies

公演情報

〈Noism1+Noism0 森優貴 / 金森穣Double Bill公演〉
2019年12月13日(金)~15日(日)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
2020年1月17日(金)~19日(日)彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
https://noism.jp/npe/noism1and0_doublebill_2019/