初演は1972年のブロードウェイでトニー賞5部門を受賞した作品。演出・振付は、ミュージカル『キャバレー』『オール・ザット・ジャズ』『CHICAGO』など数々のヒット作品を生んだ伝説的振付家ボブ・フォッシー。彼の独特な世界観は「フォッシー・スタイル」と呼ばれ、彼亡き後も愛され続けている。そして13年には、ブロードウェイでリバイバル版が上演され、第67回トニー賞のミュージカル部門・最優秀リバイバル作品を含む4部門を受賞。

　物語は、ローマ帝国の後継者ピピン王子が自分探しの旅に出るストーリー。戦争、王位継承など王子ならではの苦悩や悩みなども背景に描かれているが、自分にとって一番大切なものは何か、という普遍的なテーマが貫かれている。

　しかし何より『ピピン』の最大の面白さは、フォッシー・スタイルにサーカス的要素を取り入れたエンターテイメントにあるだろう。空中を飛び交うアクロバティックな演出と、メルヘンの世界に迷い込んだようなカラフルな色使いに、一気にファンタジー・ワールドへと誘ってくれる。ダンス・サーカス・メルヘンがぎっしり詰まったおもちゃ箱のような世界に思いきり浸ってみたい。