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~快走でスタートしたミュージカル『HEADS UP!』~
近年でミュージカルの舞台裏を描いた作品はこれまでにもあった。2012年に米国の『SMASH(スマッシュ)』がヒットしたが、テレビドラマでの放映である。それを生の舞台で見せてしまおうという、これまでにない企画を実現させたのが、ラサール石井の原案・作詞・演出の『HEADS UP!』。
まず出だしからの演出がニクイ。舞台裏を描いている世界だからこそのキャストの出入りに工夫があり、観客も舞台裏スタッフの一員であるかのごとく瞬時に惹き込まれる。舞台裏の仕掛けが舞台上に繰り広げられ、舞台監督、演出家、演出部などそれぞれの立場と主張がコミカル且つリアルに描かれており、そこで展開されるドラマは舞台のドラマ以上に負けず劣らず熱い。ホンモノの舞台裏スタッフも”特別出演”し、プロの仕事ぶりを垣間見せてくれる。
核となるベテラン舞台監督役に哀川翔と、振付は川崎悦子。この2人は、1980年代に活躍した男性ダンス・パフォーマンス集団「一世風靡」からのゴールデン・コンビ。哀川は舞台に出てきただけでオーラを感じさせる存在感で舞台監督役にぴったり。また特筆すべきは、ベテラン俳優役の今拓哉。朗々とした声量とコミカルさと哀愁を漂わせ、舞台の求心力を放っていた。中川晃教の伸びやかな歌声、芋洗坂係長の軽快なダンス、演出部・上原理生の荒くれっぽい役どころもはまっていた。
舞台裏のドラマを見せつつ、舞台上のミュージカル『ドルガンチェの馬』の本番を見せる二重構造は、舞台の面白さを倍増させる絶妙な演出!終盤で、客席と舞台が一体化する“マジック”に観客は息を呑み、哀川と川崎コンビならではの粋なパフォーマンスで会場は沸き、盛大なスタンディングオベーション初日で幕を閉じた。
〈2015年11月13日 KAAT芸術劇場〉
※兵庫、札幌、岡山公演は下記のスケジュールで上演
公演情報
【兵庫公演】2015年11/26(木)~29(日)兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
http://www.m-headsup.com/hyogo.html
【札幌公演】2015年12/3(木)札幌市教育文化会館
http://www.m-headsup.com/sapporo.html
【岡山公演】2015年12/13(日)倉敷市芸文館ホール
http://www.m-headsup.com/okayama.html