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◆◆レビュー評◆◆文・守山実花 ハンブルグ・バレエ団 ガラ公演〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉

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   ~生の歓びで空間を満たした幸福な時間~

 ガラ公演と冠されているが、ただ名作を並べただけではない。12の作品からある部分を取り出し(『作品100-モーリスのために』のみ全曲)、再構築、ノイマイヤー自身が語り手となり、一つの作品が創りあげられている。描かれるのは、彼自身の人生であり、ダンス・音楽への愛、彼を創作へと駆り立てる原点、尽きることのない熱情だ。
 ノイマイヤー作品になくてならぬダンサー、ロイド・リギンズがノイマイヤーの分身として登場、少女をバレエの世界に導くバレエ・マスター(『くるみ割り人形』)、振り付けをするアッシェンバッハ(『ヴェニスに死す』)、人の世の痛みを背負うキリスト(『マタイ受難曲』)、ニジンスキーの分身ペトルーシュカ(『ニジンスキー』)……、など作品の登場人物を次々と演じていくだけでなく、ときに群舞のひとりとなり、ときには外側から作品を観る存在ともなる。私たちはリギンズに導かれて作品の奥へと入り込み、また様々な角度から作品に向かい合うことができる。リギンズは自在の柔軟な表現力、求心力で、作品に一本の芯を通した。
 構成は緻密、作品と作品が互いに照らしあうように連なり、その移行の手法も洗練されている。一部を切り取り別の文脈の中に置くことで、作品は新たな生命を得て、躍動していく。人間の弱さ、罪、悔悛、赦し、贖罪を生身の身体で静かに、そして激しく表現する『マタイ受難曲』から、救い主の誕生を寿ぐ祝祭的な『クリスマス・オラトリオⅠ-Ⅳ』へと発展していく第一部後半の構成に圧倒された。
 音楽・テーマの多様性、振付語彙の広がり、群舞の多義性など、文字通り‛ノイマイヤーの世界’が凝縮し、音楽と肉体が一つになって生の歓びで空間を満たしていく、幸せな時間だった。

〈2016年3月9日 東京文化会館 / 文・守山実花〉

 

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〈舞踊評論家/守山実花〉

新聞、雑誌、公演プログラム、映像ライナーノートなどに、作品解説、インタビュー記事、公演評などを執筆。これまでに200人を超えるダンサー・振付家へのインタビュー取材を行っている。現在は尚美学園大学非常勤講師。清泉女子大学生涯学習講座ラファエラアカデミアなどでバレエ鑑賞講座を担当。著書「バレエに連れてって!」「もっとバレエに連れてって!」(青弓社)「食わず嫌いのためのバレエ入門」(光文社新書)「魅惑のドガ」監修・著 (世界文化社)「バレエDVDコレクション」監修・著(デアゴスティーニ・ジャパン)など。