ページの先頭です。

INTERVIEW

関かおりSeki Kaori

ダンサー・振付家

「創らない自分は想像できない」

2003年に初めてソロ作品『少女地獄』を発表以来、創作を続け2012年に岩渕貞太との共作『Hetero』にて、横浜ダンスコレクションEX2012「若手振付家のためのフランス大使館賞」、同年にトヨタ コレオグラフィーアワード2012にてグループ作品『マアモント』を上演し、「次代を担う振付家賞」を受賞。その後、13年エルスール財団新人賞、2017年「第11回日本ダンスフォーラム賞」を受賞。来る6月に新作発表を控え、躍進を続けるダンサー・振付家の関かおりに迫る。

 home_mainimage01_sp

 

 2013年に、“無数の小さい点の集まり”という意を込めた自らのダンスカンパニー「関かおりPUNCTUMUN(プンクトゥムン)」を結成。約19年の舞踊生活の中で、新たな作品を生み出し続ける創作への「原動力」となるものは?

音楽と創作の関係性

 「”創る”ということが、普段の生活からそんなに離れたところにない気がしています。思っていることを形にどうできるか、どう落としていけるかが毎回手探りなのですが、いつも何かを創りたいという気持ちがあります。私は5歳のときからバレエを習っていたこともあり、音楽を聴いて踊りを想像したりすることが普通でした。そして今は踊りを教える場も頂いている。踊りに関係する仕事をさせていただけるのは幸せですし、いつも孤独だけど孤独でないという感覚です」

 「原動力」をあえて言葉で表現すると?
「”ダンスがいつもそばにある”というようなかっこいいフレーズはしっくりこないんですが(笑)、創らない自分は想像できない。あえて当てはめてみるならば…”不満と欲求”かなぁ。以前は人間以外の生き物に興味があったけれど、今はもっと人間を知りたいと思っています。あとは人間や生き物を動かしているもの」

 「PUNCTUMUN(プンクトゥムン)」の舞台で特徴的な点は、舞台に「香り」を用いること、そして音の使い方が挙げられる。香りへのアプローチは、舞台公演に来た人でないと体感できないという意図があるが、「音楽を使わない」こだわりはどういうところにあるのだろうか?

「音楽はリズムや雰囲気を作ってくれますし、ダンスとの相乗効果があるのは感じています。ただ、私の作品ではそれが過剰というか、押し付けになる。昨年、サティの音楽を使用した作品を発表する機会があり好評でもありましたが、『かおりさんの舞台作品に音楽はいらないと思います』という感想 も頂いたりして、やはり私の作品には音楽はなくてもいいな、と。またいつか挑戦するかもしれませんが、今はまだ考えられません」

 「触覚」という言葉も「PUNCTUMUN(プンクトゥムン)」の舞台のキーワードとなっているような印象を受ける。
「私は聴覚・嗅覚といった五感を大切にしたいという思いがあり、お客さんの感覚に触れるようなかすかな音を取り入れています。観ている人にとっては客席の誰かが出した音なのか、作品中の音なのか判断がつかないこともあるかもしれないですけどね」

 野坂公夫、坂本信子主宰のダンスワークスに通ったのがバレエ以外の世界に入るきっかけというが、プロのダンサーを意識したのはいつぐらいからだったのだろうか。

「高校卒業後の進路を決める時にやりたい職業がたくさんあったんです。高校では演劇部に入ったり、劇団のお手伝いをしていた時期もあり、歌もお芝居もダンスにも興味があって、並行して活動している間に、だんだんとダンスの比重が大きくなっていきました」

 出会いと別離

 プロとして初めて舞台に立ったのは、じつはミュージカルだったというが、その後、振付家・ダンサーの山田うんとの出会いが、現在の活動につながる大きな影響をもたらした。そして、2008年にイスラエルで開催されたGAGAのインテンシブクラス(バットシェバ舞踊団芸術監督オハッド・ナハリンが開発したプロ向けの短期集中コース)に参加したことで、さらに新しい扉が開く。

「その頃、どうやって自分の身体とつきあっていけば良いんだろうと悩んでいたのですが、その答えを見出せたような気がしました」

 また、ダンサー・振付家の岩渕貞太との結婚も大きな変化の一つだった。
「ダンサーとして苦悩していた時期もあり、岩渕への嫉妬もありました。今は結婚し、一緒にいるから自分ひとりで頑張れることがある。ただ、たまに、彼のサポートに回った方がいいのかなと思うときがあります。そう考えるのは自分がだいたい落ち込んでいるときですが(笑)」
 
 そう言ったときの彼の反応は?
「『かおりちゃんは、創らないなんてことは無理でしょ』と。でも、私が創らなくなったら結婚生活を続けられるのかと考えるときもあります。創るためにいっしょにいる、というわけでもないのですけどね」

 そして近年の大きな出来事は、大駱駝艦創設メンバーのひとりであり舞踏家・室伏鴻の逝去。2015年6月の突然の知らせだった。
「室伏さんが亡くなったショックは大きかったです。クリエーション途中の公演もなくなり、リハーサルする予定だった期間に心の整理をつけるためにひとりでフランスへ行きました。そこでいくつかのダンス作品の映像を観たのですが、それらの作品がとても力強くて、自分はまだまだだとポジティブに思えることができました。
 作品を創っていく上で圧倒的に足りないのが思考の深さだと感じます。感覚人間なので、もちろんその部分は大事にしていきたいのですが、世界をもっと知りたい。深い知識を持ちたいと思っています」

「踊っちゃわない」作品

 そういった数々のターニングポイントを経て、自らのスタイルを築き上げてきた成果は、数々の賞の受賞歴が物語っている。ダンサー・振付家としての強みを伺ってみると、「いわゆるテクニックでないところでみせる、という点だと思います」「どんなに身体が利くダンサーでも、だから何なの?と思ってしまうことが多い」と語る。

「私は、触覚・手触りなどを大切に、観客の内側、感覚に触れてきたい。また、ダンサーが作る”間”も大事にしています。日本人と外国人だと”間”の取り方も違いますが、それも面白いと思っています。舞台上に『いる』『ある』ものの、”間”の中に現れるものを見て欲しい」

 創作過程でダンサーへの指示が非常にユニークだ。
「『踊っちゃわないで』『きちんとそこに“いて”欲しい』とよく言います。ダンサーって身体を無意識に動かせてしまうことがある。でも私の作品では“踊ら”ないでほしい。意味なく小手先で動いちゃう感じがあまり好きでないです。『どういう理由でそう動いたの?』とダンサーに聞くこともあります」

 そして6月30日(金)から、PUNCTUMUN(プンクトゥムン)の新作公演が開催される。タイトルは『うとぅ り』。造語ではなく、平安時代の口語の発音を再現した形だ。「時が経過する」「色褪せる」「もののけなどが乗り移る」という意味と「うつらうつら」の「うつ」の語源説である「現(うつつ)」「空、虚(うつろ)」から名付けた。
「やっと作品に合う言葉と響きが見つかりました。ここにいる存在、いた存在、幽霊とか、見えないもの、忘れてしまうもの、近いもの、遠いもの、生と死、といったことをヒントに作品を創っています。
 クリエーションに入ってからも、人間て…とがっかりするようなニュースが続いて、自分でもびっくりするくらい無気力になったりしました。こういう世の中で何を発表するのかということが、年々強くなっていく自分の中の課題です」

 どのような作品を目指しているのだろうか。
「今までの作風をガラリと変えるつもりはないのですが、その中にもユーモアが必要だと思っています。私の思うユーモアは風刺的なものです。会場に来ていただくことが、その人の経験・体験になれたらいいなと常に思っています。
 身体同士で同じ空間と時間を共有するから届くもの。舞台芸術は皆そうだと思うけれど、私の作品はこれが絶対です。観て味わう経験をしてほしい。身体で味わって頂きたいです」

 キャストは、PUNCTUMUN(プンクトゥムン)のカンパニーダンサーと関を含め、10人が出演する。
「出演者の他に、リハーサルアシスタントについてくれているダンサーがいて、11人でリハを進めています。今後もこのカンパニーのダンサーと活動してゆきたいと思っています。ダンサーにより良い環境を与えられるようにしたい。ある意味、夫より大事な存在かもしれません(笑)。近い将来、国内外で公演ツアーを実現させたいです」

C) Takao Sakai

C) Takao Sakai

==プロフィール==

5歳よりクラシックバレエを学び、18歳よりモダンダンス、コンテンポラリーダンスを始めると同時に創作活動を開始。2003年より作品を発表し、13年関かおりPUNCTUMUN設立。近年はヒトや動植物の生態や感覚機能に興味を持ち、嗅覚から得る感覚などを作品要素に取り入れた作品を国内外で上演。12年岩渕貞太との共作により横浜ダンスコレクション若手振付家のための在日フランス大使館賞、同年トヨタコレオグラフィーアワード2012次代を担う振付家賞、2013年エルスール財団新人賞、2017年日本ダンスフォーラム(JaDaFo)賞2016受賞。公益財団法人セゾン文化財団2014~2017年度ジュニアフェロー。

公演情報

関かおりPUNCTUMUN 新作ダンス公演『うとぅ り』
2017年6/30(金)~7/2(日) シアタートラム
http://www.kaoriseki.info