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INTERVIEW

大宮大奨Omiya Daisuke

ダンサー・振付家

「自分にいつも正直に踊れるダンサーでいたい」

ニューヨークから帰国後、時を置かずに注目され、2015年にシディ・ラルビ・シェルカウイ演出・振付『プルートゥ』や、新上裕也の演出・振付『GQ2015 GABBY』に出演を果たし、漫画家・荒木飛呂彦原作の『死刑執行中脱獄進行中』にも抜擢される。2016年には南インドに渡り、インド政府公認シバナンダヨガ講師資格を取得。ジャンルフリーのダンサー・振付家として、次世代を率いるアーティストとして、期待されている。

 2018年1月には『プルートゥ』再演の出演も決定。そして、9月8日から出演する舞台の百鬼オペラ『羅生門』のリハーサル真っただ中にインタビューに応じてくれた。
 本公演の演出・振付・美術・衣裳を手掛けるのは、ミュージカル『100 万回生きたねこ』で演劇賞を総なめにしたインバル・ピントとアブシャロム・ポラック。芥川龍之介の名作『羅生門』ら4作品をどのように料理するのか楽しみだ。主演の俳優たちがダンスに挑戦するということでも話題を集めており、大宮大奨は、本作で”百鬼”として出演。

表現の極意

 俳優たちとのリハーサルはどんな感じだろう?
「この作品のメインは演劇ですが、役者さんにもダンス、フィジカルな要素が加わっているので大変だと思います。ダンサーが踊れるのは絶対条件だけど、インバルさんの作品は、感情を読み解くことが出来る余白のある不完全な身体である方が、世界観が合っているのではないかと感じるときもあります」
 
 俳優たちにダンスのアドバイスすることはあるのだろうか?
「ストレッチの仕方を教えたりすることはあります。ダンスはテクニックと、“素質”でできる部分とがあるので、テクニックが無くてもその人に合う、身体の美しさが見出せれば、表現につながると思います」
 
 インバル・ピントの第一印象はどうだったのだろうか?
「温かい人。溶け込みやすい人だなと感じました。僕はイスラエル人の友達が多いんですが、その中でもインバルさんは特にチャーミングな人なので、シャイな僕でも仲良くなれそうだな、と」
 
 今年3月にはダンサーのみでワークショップが行われたらしい。
「抽象的な動きを色々なアイディアを出しながら試したり、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』の作品から組み立てたシチュエーションを表現したりしました。インバルさんはフィジカルが強い踊りを好まれるのですが、僕自身もフィジカルが強いのでやりやすかった。
 重心が下となる動きを取り入れているので、日本人はそういった運動の方が本来は得意なので、すんなり進んでいると思います」
 ニューヨークで数年のダンス留学経験があるので、英語で直接会話ができることもコミュニケーションがスムーズにいっている要因の一つだろう。
 
 今回は、百鬼(妖怪)!?での出演となる。
「インバルさんは具体的なイメージを絵に描く人なので、絵を通してイメージを示してくれるから取り組みやすいですね。僕自身もイマジネーションが強いのでクリエイションでは共通点も多く好きなようにやらせてもらっています(笑)。インバルさんはリーダーシップをとって動きを考えられることが多いので、いかにそれを瞬時にキャッチするかを常に意識しています。
 彼女のニュアンスを僕だったらどうやったら魅せられるのか、どうしたら自分の身体に置き換えられるか。それらを通して各シーンをどう面白くしていくかが今作では楽しみでもあります」

 挫折感と新しい扉

 そもそもダンスの世界、タップダンスの世界に入ったのはどんなきっかけがあったのだろう。
「北野武監督の『座頭市』のタップダンス・シーンを観たのが、きっかけだと記憶しています。高校生のときだったのですが、それからダンスをはじめました。
 そのときは、それがタップダンスという認識もないぐらいでした。地元で高校2年生からダンスを習い始めて、タップダンサーの熊谷和徳さんに出会って、東京のワークショップに通ったりしていました」
 
 しかし、ダンスへの情熱はそれだけに留まらなかった。
「大学へ進学するかどうかの進路を決めるときに、『ニューヨークに行きます!』といきなり先生と親に宣言しました。両親は結構あっさり受け入れてくれましたけど(笑)。
 ニューヨークで3,4年間はテクニックをひたすら真似ていたのですが、技術以外に越えられない壁があるとも感じはじめていました」
 
 またひとつのターニングポイントが現れる。
「あるときダンス仲間のみんなでセビヨン・グローバーのオーディションを受けたんですが、僕だけ受からなかった。そのとき22,23歳だったのですが、それまでにない挫折感を味わいました」

 その挫折が新しいコンテンポラリーダンスとの出合いを生むことになる。
「笠井瑞丈さんが、『大ちゃん、違うダンスやってみたら?』という言葉をかけてくれて。 それで2010年ぐらいからニューヨークのアルビン・エイリーでのダンスのクラスを受けたりしました。もともと僕に合っていたのかもしれませんが、コンテンポラリーダンスをはじめてから1年間ぐらいで急成長できました」

ダンスとは

 確かにその身体能力の高さと表現力は、コンテンポラリーダンサーのみならず、バレエダンサーにも評価が高いが、その秘密は?
「そう言われてみると、学生のころから体育の成績はいつも良かったですね。子供のときにジャッキー・チェンに夢中になって、柵を越えたり、ジャンプしたり、色々なアクションを真似ていました。大人になって分かったんですが、頭の中で動きのイメージを創ることができていたみたいです」
 
 様々なジャンルのダンスを習得しているが、一番影響を受けたダンスといえば?
「ダンスをはじめた最初のステップになったのがタップなので、やはりタップダンスですね。ダンスのテクニックだけでなく、仲間からもらったものが大きかった。シャイだった自分から、タップダンスが取り払ってくれた。
 当初はニューヨークにいるくせに自分の殻に閉じこもっていました。でも、現地のジャズミュージシャンとセッションしたり、一生懸命パフォーマンスしているときにはシャイな自分が消えていました」
 
 自身にとってのダンスとは?
「健康のためかな(笑)。“心の”、です。もちろん身体の健康のためもありますが、心が、『踊らないとしょうがない』と言っているんです。たとえ舞台がないときでも、普段の生活でもダンスのことを考えている。
 僕にとってのダンスは、生きている楽しみの中のひとつ。たぶん踊らないとメンタルが不安定になると思います(笑)」
 
 これから目指したいものは?
「自分をもっと探求してゆきたい。自分とは何者かを答えに繋げるために作品を創っていきたいですね。自分にいつも正直に踊れるダンサーでいたい」

 

C) Takao Sakai

C) Takao Sakai

==プロフィール==

16歳でタップダンスを始め、18歳で単身渡米。ニューヨークを拠点に数多くのタップマスターに師事。『ザ・ニューヨーク・シティー・タップ・フェスティバル』など米国内外のタップダンス・フェスティバルに出演。2009年モダンダンス、コンテンポラリーダンスに出会い、ジャンルレスのダンサーに。2011年よりソロ活動を開始。2014年に帰国後、シディ・ラルビ・シェルカウイ作品や海外アーティストのミュージッ クビデオに多数出演。2016年にインド政府公認シバナンダヨガ講師資格を取得。2013年新人振付家としてイタリアン・インターナショナル・ダンス・フェスティバル優勝。2014年ニューヨーク・アジアンコミュニティーへの貢献により、日本人初の新人アジア人ダンサーとしてジェイディン・ワン・アワード賞を受賞。

 

公演情報

百鬼オペラ『羅生門』
2017年 9/8(金)~25(月)Bunkamura シアターコクーン
http://operashomon.com/