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INTERVIEW

青山季可Kika Aoyama

牧阿佐美バレヱ団プリンシパル

「一つひとつを大切に踊りたい」

わずか8歳で『くるみ割り人形』全幕のクララ役で全幕デビューを果たしたバレリーナの青山季可。英国ロイヤルバレエ学校、ハンブルグバレエ学校の留学を経て、2001年に牧阿佐美バレヱ団に入団。23歳で『白鳥の湖』の主演デビューを果たすなど、同バレエ団を代表するダンサーの一人として活躍している。

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 舞台に立っているだけで華やかで可憐な存在感を放つ青山季可。キラキラした笑顔は観客の心を魅了する。来る10月から12月まで、4つの舞台を抱える多忙中のプリンシパルの素顔に迫った。

本物の感動

 3歳でバレエ教室に通い始めて、13歳で英国ロイヤルバレエ学校に留学を決めたとのことだが、まだ中学一年生になったばかりで大変なことも多かったのではないだろうか?
「寮生活は初めてだったので不安もあったんですが、仲の良い友達がすぐできて、じつは今もつながっているんです。私は人見知りなので自分から積極的にいけず、あまり自分から連絡を取るタイプではないんですが、バレエ学校時代の友人は来日するたびに必ず会いに来てくれるんです」

 ロイヤル学校卒業後は、ドイツのハンブルク・バレエ学校に進学する。
 「ハンブルグバレエ学校時代で辛かったことは、体調を崩してしまい貧血もあったりして、自己健康管理ができなかったことです。でも、私は物語バレエが好きなので、プロのダンサーが舞台に立っている姿を間近で観られることが一番嬉しかった」

 プロのダンサーを意識したのはいつぐらいのことなのだろうか。
「私は大阪でバレエを習っていたのですが、そのときいらしたゆうき先生が『くるみ割り人形』のクララ役のオーディションを受けてみたらとおっしゃってくださったことが舞台出演のきっかけです。
 プロのダンサーとして意識しはじめたきっかけがあったというより、与えられた役を必死でこなしてゆくうちに、ここまで来させてもらったという感じです」
 
 大人たちと混じっての舞台は、かなり緊張したのでは?
「全幕の舞台に出演したのははじめてだったので、吹雪のシーンで雪が舞い降りてきて、わー、本物なんだ!物語ってこうやって創り上げてゆくんだという感動の方が大きかったと思います」

 その後、東京に移住し、ますますバレエへの愛情を深めてゆく。
 「『ドン・キホーテ』のキューピット役をやらせて頂いて、私もいつか入りたい。入れるかな。ずっとバレエに携わっていたい、そんな思いをなんとなく抱いていたと思います」

忘れられない悔しい思い

 幼い頃に憧れたのはどんなダンサーだったのだろうか?
「私はDVDを観て海外のダンサーに憧れるというタイプではなかったのですが、ビュビュアナ・デゥランテ、草刈民代さんも素敵だなと思いました。そして、今も指導してくさっている小嶋直也さんも子どもから見ても、ストイックですごいなと感じました」

 バレエ以外で好きなものは洋服というが、ダンサー以外の選択肢はあったのだろうか。
「うーん、あまりなかったかもしれないです。先輩からは、そんなにバレエしかできないんだったら、もっと上手くなってもいいのにねって言われます(笑)。できていないことばかりなので」
 そう謙遜するが、辛口の先輩のコメントは、お互いの信頼関係の深さを思わせる。

 牧阿佐美バレヱ団に入団してから2018年で17年を数えるが、振り返ってみて大きな出来事や苦悩を経験したことは?
「私はゆっくりしか成長しかできないので、役をこなすのに精一杯。このままでいいのかなと悩んだ時期もありました。振付の覚えですか?悪い方だと思います(笑)。時々牧先生のクラスでレッスンするんですが私の覚えの遅さに先生は
苦笑しているぐらいです。 
  『眠りの森の美女』の公演ではじめて配役された舞台があリました。妖精、ニンフ、フロリナ王女、宝石に出演するはずだったのですが、足の痛みもあり、先生方がまだ充分でないと判断されて、はじめて役を降ろされました。はじめての演目のはずだったのに、とても悔しかったのと、周りにも失礼なことをしてしまったという思いいっぱいでした」
 その忘れられない悔しい思いが、それ以降の「降板した舞台はゼロ」という実績に結びついてゆく。

 そして、もうひとつ。記憶に深く残る舞台は、2014年のスペイン・グラナダでの海外公演。
「日本で『ドン・キホーテ』の全幕を踊った3日後に、スペインで『眠りの森の美女』と『パキータ』の出演がありました。じつはその『ドン・キホーテ』の10日前に捻挫してしまい、治療と痛み止めで舞台に立ったので、とてもハードでした。
 1幕の後そのまま2幕になる構成だったのですが、2幕までまったく拍手がない環境だったので野外劇場だったので、拍手が届きにくいというのもあったかもしれないのですが、スペインのお客様に受け入れられていないんだと」
 不安な気持ちを抱えながらの舞台だったが、後にその事実を知ることになる。
「スペインのグラナダでは音楽フェスを開催することでも有名だそうなのですが、音楽が演奏されているときは、拍手をしない、というルールがあるそうなんです」
 終演後は温かいたくさんの拍手で迎えられた。

やっと役に追いついてきた

 周囲から言われて印象的だった言葉はありますか?
「阿佐美先生から、今年の5月に主演した『ドン・キホーテ』のキトリ役が、『今までの中では一番良かった』と言われたことです。三谷先生からは、『飛鳥』の金竜役が『今までで一番マシ』と言われました」と笑顔を浮かべる。
「あのときは良かったと言われるよりいいですから。20代前半で『ジゼル』に主演したとき、私はまだこんな深い悲しみを背負ったことがないと感じました。なので今やっと役に追いついてきたと感じています」
 
 以前『リーズの結婚』のインタビューで、「性格的にはリーズとだいぶ違う」と語っていたが、ご自身の性格をどのように感じているのだろう。
「周りからは明るく見えるらしいのですが、私自身ではあまりそう思っていなくて(笑)。リーズみたいに、あんなに明るく生きられたらいいなって思います。私は人によってだいぶ印象が変わるみたいです。『白鳥の方がいい』という方と『黒鳥の方がいい』という方に分かれるようです」

 プライベートでは、読書と音楽に親しむというバレリーナだが、ジャズやロックも好んで聴くという。ボブ・ディランの元恋人の自伝を読んで、ディランのライブにも行ったことがある。
「ジャズを聴きたい。ピアノだけとかシンプルな音を聴きたいときは、ビル・エヴァンス。彼の音楽は数学的。ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンも好きです。色々なことを乗り越えてきたところにも感銘します。私は音痴なので音楽は聴く専門ですけど(笑)」

 今後、踊りたい演目は?
「人間的な感情が動く作品が好きなので、そういう作品に出演したい。ノイマイヤー版の『椿姫』が特に好きです。ショパンのそぎ落とされた旋律が素晴らしいと思います」

 そして、10月から12月までに4つの舞台が控えている。
7日(土)と8日(日)は文京シビックホールで『眠れる森の美女 』でフロリン王女に出演。28日(土)と11月3日(金)にはオーバード・ホール(富山市芸術文化ホール)とよみうり大手町ホールで金竜役のソロを踊る。12月16日(土)と17日(日)は、『くるみ割り人形』の金平糖の精で2017年を飾る。

 「金竜役は、牧先生方2代が継承されている思い入れが強い作品なので、そのイメージに近づけたい。ゆうき先生から教わったことをひたすら踊り込む。バリエーションが5曲あってソロは私だけなのですが、苦手なステップが入っている場面があるので、スピーディな短いソロのバリエーションの中でどこに印象に残せるのかを探っています」
 舞踊評論家より「隅々まで神経が行き届いた踊り」と高評を得た舞台に大いに期待がかかる。

 12月の『くるみ割り人形』では、プリンシパルの菊地研が王子役でパートナーを組む。
「以前は役の解釈でよくお互い衝突したりすることもありましたが、最近は色々なバリエーションを試してみることが多くなりました。音楽的にも素晴らしいですし、アダージオのシーンが一番やりがいがあるので好きです。
 バレエダンサーとして踊る期間は限られているので、一つひとつを大切に踊りたい」

 

C) Kengo Dotani

C) Kengo Dotani

==プロフィール==

川上恵子バレエ研究所を経て、第18期AMステューデンツ、橘バレヱ学校、英国ロイヤルバレエスクールおよびジョン・ノイマイヤー・ハンブルクバレエスクール卒業。2001年牧阿佐美バレヱ団入団。1993年東京新聞全国舞踊コンクール・バレエ第2部1位文部大臣奨励賞。2007年第4回スワン新人賞。2012年平成24年度中川鋭之助賞。

公演情報

牧阿佐美バレヱ団『眠れる森の美女』
207年10/7(土)、8(日)文京シビックホール 大ホール

牧阿佐美バレヱ団『飛鳥』
207年10/28(土)オーバード・ホール(富山市芸術文化ホール)

『~躍動~』牧阿佐美バレヱ よみうり大手町ホール特別公演
2017年11/3(金)よみうり大手町ホール

牧阿佐美バレヱ団『くるみ割り人形』
2017年12/16(土)、17(日)文京シビックホール 大ホール
http://www.ambt.jp/perform.html