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INTERVIEW

沖 香菜子Oki Kanako

東京バレエ団ファーストソリスト

「また観に行きたいと思ってもらえるダンサーになりたい」

2010年に東京バレエ団に入団し翌2011年にベジャール振付の『ダンス・イン・ザ・ミラー』で初舞台を踏み、2年目以降は、子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』のオーロラ姫、『ロミオとジュリエット』のジュリエット、『ドン・キホーテ』のキトリ役などの主演に抜擢。そして2018年、4月の『真夏の夜の夢』、と6,7月の『白鳥の湖』と、主役デビューが続く注目のファーストソリスト、沖香菜子。

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 キラキラした大きな瞳とスラリと伸びた手足はまさに理想のバレリーナを体現している。リハーサルの合間をぬってインタビューに応じてくれた。

フォーゲルと初共演! 

 2018年4月28日と30日のアシュトン振付の『真夏の夜の夢』 では、初めてタイターニア役を踊る。オベロンにはフリーデマン・フォーゲルを迎え、こちらも初役となる非常にエキサイティングなキャスティング。
「私はフォーゲルさんとはかなり身長差もあるので、パートナーとして選ばれるとは思いもしなかったので、私が?とびっくりしました。この演目は、私が入団した2010年以降から上演されていなかったので、2018年の上演演目にあると知ってからワクワクしていました。まさか、私がタイターニアとして出演させてもらえるとは思っていなかったので、嬉しいです」

 フォーゲルのダンサーとしての印象は?
「全身からバレエが好き、踊ることが大好きというキラキラしているオーラを感じます。ガラの公演の『チャイコフスキーのパ・ド・ドゥ』のリハーサルで、コーダを見学させてもらったのですがかなりキツイパートのはずなのに最後まで疲れをまったく感じさせない踊りで圧倒されました。リハ―サルからこんなにキラキラしているんだ。作品としての見せ方が徹底されているんだなと感嘆しました。
 まだ直接お話ししことはないとのですが、とても楽しみです。“よろしくお願い致します”という気持ちで(と深々と頭を下げる)組ませて頂きたいと思っています」

 そして、パック役には同じファーストソリストの宮川新大。これまでも何度か組んでいる息も合ったパートナーである。
「私の方が一応先輩なので、立ててくれていると思いますが(笑)、リハーサルのときはここはもっとこうした方がいいよねとか、ふたりでは結構話し合いをしながら進めます。宮川さんは、上手な男性ダンサーの中でもずば抜けて爪先が綺麗で、足さばきの細かいテクニックがとても素晴らしいんです」

もう一度踊りたい

 母親がバレエファンであったことから、物心がついた頃からはもうバレエ教室に通っていたというが、「幼稚園の卒園アルバムに、“バレエの先生になりたい”って書いてあったんです。幼稚園の頃からバレエが楽しかったんだなぁって」

 もしバレエダンサーでなかったら、「バレエショップの店員さんになっていたかもしれない」と語るが、18歳でボリショイ・バレエ学校に留学を決意した時から、必ずバレエ関係の仕事に就こうと秘かに誓っていたという。卒業後に帰国を決めたのは、バレエ教室時代の先輩が東京バレエ団に入団していたこと、同バレエ団の公演を観に何度も通っていたこともあり、東京バレエ団への入団は自然な流れだった。

 出演した中で、一番印象に残っているのは2014年の『ロミオとジュリエット』のジュリエットを踊ったときというが、それにはある裏話がある。リハーサル中の怪我。しかしそのときは気づかずに、痛みが引かないので2日後に診察してもらって肋骨を骨折していたことが判明。
「2日間痛みに耐えられたぐらいなら本番に出ても問題ないとお医者さんから言われ、それなら、大丈夫だ!と割と明るく前向きでした(笑)」
 しかしそれ以上に、ジュリエットの役は非常に思い出深い作品となった。
「リハーサル期間が1か月ぐらいしかなかった分、本当に濃い毎日でした。怪我して不安だったのですが、それ以上にジュリエットを演じているのが楽しいという気持ち。作品に取り組むことが幸せな時間でした。
 これまでの作品では、あとはフェッテを乗り切ったらもう少しだとか、無事に終わった!という気持ちになることが多かったのですが、ジュリエットを踊ったときは、終演後は呆然としていました。ロミオ役の柄本弾さんもそんな感じだったみたいで、いつもは、終わった後、みんなにお疲れさま~!と笑顔で挨拶するんですが、そんな気分にもなれず…という感覚でした」

 ある知人からの言葉が胸に残っているという。
「私はどちらかというと、少女のような可愛らしさ、と言われることが多く、表現の幅を広げることが自分の課題でもあると思っているのですが、『幼さが残るジュリエットから、大人の女性に成長してゆく姿が見えた』という言葉はとても嬉しかったですね。
 あの舞台以降、主演の経験も重ねているので、今はもう少し成長した踊りができるんじゃないかな。ジュリエットをもう一度踊りたい。あの時間が楽しかった、幸せでした」

 さらに高みへと成長させた『ロミオとジュリエット』だが、役への取り組み方はどうしているのだろうか。
「作品によって違います。下調べから入った作品もありますが、基本的に映像を観たりして勉強します。『くるみ割り人形』などのクララや『ドン・キホーテ』キトリは色々な役の解釈があってもいいと思いますが、原作がある演目は、書物などを読んでからイメージを膨らませます。原作に沿った役を演じたい思いがありますね。
 プレッシャーはあんまり感じない方だと思います。不安を感じないようにするためにどうすればいいかを考えます。悩んでいる時間がもったいないので、その分レッスンに励むようにします」

知られざる悩み

  完璧なまでの身体のラインを持つバレリーナだが、意外な悩みに驚かされる。
「自分が目標とするレベルに到達していないことを自覚したときは落ち込みます。役の解釈に関しては自分で想像して解決できることだと思いますが、生まれ持ったラインを直すのは難しい。
 私はバレエ向きの脚をしていないので、この脚でもどのような角度を出したら綺麗に見せることができるかということを研究しています。生まれ持った綺麗な身体を持っているダンサーはたくさんいます。
 でもあまり思い詰める性格ではないので、これまで精神的にとても辛かった記憶はあまりないです。団員のみんなからは、いつも元気でいいね~と少し呆れられているぐらいかも」とキラキラした瞳で語る。この精神的タフさと笑顔が周囲にも明るいパワーをもたらしているのだろう。

 そしてさらなる活力を与えてくれたのが、ハンブルク・バレエ団芸術監督のジョン・ノイマイヤーによるリハーサル指導。東京バレエ団のために『スプリング・アンド・フォール』をはじめ、いくつもの作品を提供しており、同バレエ団との結びつきも強い。
「『確固としたストーリーがない抽象的な作品はパートナー同士で想像して創っていいんだよ。ふたりにその気持ちがないと、観ている人になにも伝わらない舞台になってしまう』と直接教えてくださって、幸せな時間でした」

 充実したバレエライフの一方、「ご飯を食べているときが幸せ」という唯一のオフタイムを過ごす。バレエ団のレッスンが終わったら、バレエを教えに行く超多忙の日々だが、むしろバレエ漬けの毎日を楽しんでいるようだ。
 4月の『真夏の夜の夢』の後は、ブルメイステル版『白鳥の湖』の主演も決定し、舞台漬けの日々が続く。ブルメイステル版は、より原作に忠実に描かれており説得力を持たせた版となっている。

『白鳥の湖』の主演デビューを飾るにあたり、憧れのオデット/オディールを伺ってみると、
「ウリヤーナ・ロパートキナさんです。あのアームスの使い方は言葉にならないぐらい素晴らしいです。私とはまったく違う次元の方なので、こんな言い方をすると失礼かもしれないのですが、ロパートキナさんはバレエ向きでない脚と言われていたらしいですが、そんなことはまったく感じさせない踊りで勇気をもらえる気持ちがしました。
 『白鳥の湖』は、古典の中の古典作品なので、もう一度気合を入れて基礎からやり直したいと思っています」

 今後の夢もシェアしてもらおう。
「『オネーギン』に出演したいです。入団した年にリハーサルを見て感動しました。どんな役でも出たいです。おじいちゃん、おばあちゃんの役でもなんでもいいです!
 あまり先のことを考えたことはないのですが、どこまで登っていけるのかなと、一歩一歩進んでいっている感じです。入団したときから変わっていないことは、観に来てくださったお客様にまた観たいと思って頂けるダンサーでいたい、なりたいと思っています」

 

C)RYO OHWADA

C)RYO OHWADA

==プロフィール==

4歳でバレエを始める。2008年文化庁新進芸術家の海外研修制度に合格し、ボリショイ・バレエ学校に留学。2010年に東京バレエ団に入団。2012年、新制作“子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』”のオーロラ姫に抜擢。2013年『ラ・シルフィード』のタイトルロールを踊る。2014年2月の東京バレエ団創立50周年記念シリーズ・ノイマイヤー版『ロミオとジュリエット』に振付家から指名され、主演デビューを飾る。岩国公演でも『ドン・キホーテ』で主演を踊り、続く2018年の『真夏の夜の夢』、ブルメイステル版『白鳥の湖』でも主役を射止める。

公演情報

「真夏の夜の夢」「セレナーデ」
2018年4/28(土)~30(月・祝) 東京文化会館大ホール
http://www.nbs.or.jp/stages/2018/dream-serenade/index.html

ブルメイステル版「白鳥の湖」
2018年6/29(金)、30日(土)、7/1(日)東京文化会館大ホール
http://www.nbs.or.jp/nbsnews/372/02.html