INTERVIEW
ダンス劇作家
「今を生きて、コツコツと貪欲に」
2008年~2011年シルクドゥソレイユ『believe』の出演キャストとして、米国ラスベガスで850回ものステージに立つ。帰国後は、“踊る「熊谷拓明」カンパニー”を立ち上げ、自ら演出・振付する作品を多数発表。2019年11月には25日間40公演を上演するという記録を打ち立てた。2020年8月14日には、大和シティーバレエ夏季公演〈SUMMER CONCERT2020〉に振付・演出・出演が決定している。
ダンスに興味を持ったきっかけは、ある舞台との出合いだった。
「はじめて観た劇団四季のミュージカル『キャッツ』に衝撃を受けました。小学生だったのですが、大人たちが全身からエネルギーを発してそこにいる姿に深く感動した記憶が残っています。絶対にダンサーになってやる!というよりは、二世帯住宅で暮らす祖父母の前で、歌を歌ったり、踊ってみたり、目隠ししながらピアノを弾いたりしていた子供が、そのまま40歳になったという感覚ですね」
創作へのモチベーションは?
「自分が観たい作品を、自分で創る。これは、祖父母の前で歌って踊っていた時から変わりません。きっとこれからも。少し尖っていた数年前までは、自分の中にある不満や不安の要素こそが創作の源になると信じていて、毎日の生活に満足したら終わりとすら思っていました(笑)。でも今は、ぼくの舞台を観に来てくれる人がいて、このようにインタビューをしていただく機会も増えました。なのでとても幸せですよ。
創りたいもの、観たい景色は、まだまだどんどん出てきていて溢れています。もちろん日々、小さい不満や不安はきっとたくさん見つかると思います。でも不満や不安はけっして悪いことではない。だって、それはたぶん生きてる証拠だから、これからも今を生きて、コツコツと貪欲に、ですね」
以前、創作する上で大切にしていることは、“作品の強度を高めること”と語っていた。
「圧倒的に踊りが上手いとか、声がとても魅力的であることも、もちろん重要だと思っていますが、最終的には演者がそこに居ることに、どれだけエネルギーを費やしているか。人が存在する意義が見いだせれば、作品の存在意義も自ずと強いものになるのではないでしょうか。
自分が創作する作品に関しては、開演前はいつも自信作、終演後には次への学びが押し寄せるという状態を繰り返しています。なのですべての作品がぼくにとってのターニングポイントです」
8月14日には、大和シティーバレエ夏季公演〈SUMMER CONCERT2020に出演が決定している。
「演出・振付も担当します。 『耳なし芳一』は、怪談として取り上げられることが多いですが、自分はむしろ、和尚と芳一の人間関係に光を当てた作品を創りたいと考えました。いわゆるパトロンとアーティストのような関係だと思うんですが、その感情には色々な側面があると思います。何が正解か不正解かではなく、自分なりに面白い切り取り方ができたらと思っています」
C)大洞博靖
==プロフィール==
札幌ダンススタジオマインドにて宏瀬賢二に師事。2008年~2011年シルクドゥソレイユ「believe」出演。米国ラスベカスに850回ステージに立つ。帰国後自ら演出、振付する作品を多数発表するようになり、次第に作品の中で台詞を使いオリジナルの物語を創作するようになり、『ダンス劇』を立ち上げる。2019年には自身が1人で演じる1人ダンス劇25日間公演を決行し、延べ850名を動員。振付「夜中に犬に起こった奇妙な出来事」(森田剛・主演)
野外ダンス劇「近すぎて聴こえない」演出.振付等。
公演情報
大和シティーバレエ夏季公演〈SUMMER CONCERT2020〉
2020年8月14日(金)大和市文化創造拠点シリウス やまと芸術文化ホール メインホール
https://www.yamato-bunka.jp/hall/