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INTERVIEW

遠藤康行Endo Yasuyuki

振付家・バレエダンサー

「可能性はいつもある」

スターダンサーズ・バレエ団のトップダンサーとして日本で長きに渡り活躍した後、オーストラリア2年、ベルギー5年、フランス11年と約17年あまりを海外を拠点に活躍してきた遠藤康行。フランスでは、国立マルセイユ・バレエ団ソリストとアシスタントディレクターを兼任。

 2016年8月遠藤康行さん

 

  第2回目の〈JAPON dance project 2016〉の振付・出演のためフランスから7月に帰国し、リハーサルのなかインタビューに応じてくれた。2014年の初演から2年を経ての開催となるが、今回はどんな舞台になるのだろうか。

2年ぶりの再結成

「素晴らしいダンサーが一堂に会して、まったく違うタイプのダンサーが加わっています。3人の新国立劇場バレエ団のプリンシパルと特別出演のダンサー、そして5人のクリエイターたちから何が生まれるか、絶対に面白いものになると思いますよ」

 〈JAPON dance project 〉の5人のコアメンバーはそれぞれに振付家であり、ダンサーでもあるアーティスト集団。遠藤を筆頭に、小池ミモザ、柳本雅寛、青木尚哉、児玉北斗の5人に、今回は新国立劇場バレエ団のプリンシパル・ダンサー3名(小野絢子・八幡顕光・米沢唯)に加え、元フォーサイス・カンパニーの島地保武とニューヨークから帰国した大宮大奨が出演する。
 共に同じフランスの地で活躍している小池については、
「ダイナミックな動きでグラマラスなムーブメントができる。舞台で広がる何かを出せる。こういうダンサーは中々いないですね。マイヨーのモンテカルロ・バレエ団ではそのぐらいの瞬発力が必要とされるので。振付を覚えるのも早くて、僕の方が急かされるぐらいですね(笑)」

 このコアメンバー5人がそれぞれクリエーションにも加わると、まとめる苦労は大変なものではないだろうか。
「確かに2日間ぐらい何も進まないときもあるかもしれませんが(笑)、創作の場では対等でいるべきだと思うので、5人がイエスというのを待ちます、基本的には皆で決めてゆく形を取っていますね」

振付家への目覚め

 父親(遠藤善久)が元スターダンサーズ・バレエ団芸術監督という家庭で生まれ、幼稚園の頃からバレエに親しむ環境で育った。
「父親が振付家でもあったので色々観ていたのですが、自分でやろうとは思わなかった。でもその後オーストラリアバレエ団にて在外研修中に、若い振付家発掘の公演があり、そこで振付に接する機会がありました。その頃はスターダンサーズ・バレエ団でも踊っていましたし、振付家にすぐ転身しようという感じではなかったですね。でもその後、勅使川原三郎さんやウィリアム・フォーサイスの舞台でムーブメントを創る面白さに目覚めました」

 しかしその実、フランスで様々なクリエーションに関わってきており、その頃からクリエイターとしての下地が作られてきた。海外ならではの記憶に残る創作活動は?
「国立マルセイユ・バレエ団のアシスタントディレクターをしているときに、変わった創作活動の一つでベルサイユ宮殿の仮面舞踏会で真夜中から朝まで開催されるパーティを仕切る役目を担ったときですね。
 フランス人の本物のストリップダンサーを作品に出演させたり、イタリアの有名なDJの楽曲に合わせて振付たりなどのミックスプログラムイベントを開催しました。他にも劇場でやる公演以外にも エクスポなどのイベントも色々手がけましたね」

 もしダンサーでなかったら建築関係の仕事をしていたかもしれないと話してくれたが、その興味が自然と繋がったのだろうか、ベルギーでは多くの建築家とコラボする機会に恵まれ、その経験は今後、舞台美術等にもきっと活かされるのだろう。劇場内に留まらないこれまでのキャリアが、振付家・芸術監督の活躍の場を広げ、〈JAPON dance project〉以外にも、2015年の『横浜バレエフェスティバル』で芸術監督を務めたその手腕が評価され、来る8月に2回目となる同公演が控えている。

『日本と海外を結ぶダンサーの架け橋に』という思いのもとに設立された〈JAPON dance project〉はどのような形で進められているのだろう。
「色々なクリエイターが集まる受け皿になれたらという思いは変わりません。面白いことやっているなと興味を持ってもらえて、色々な人たちと交流ができて、参加できる場所、目標になるような創作の場を提供してゆきたいと思います。これまでやってきたことを後輩たちに少しずつ共有してゆきたい。僕たちも先輩たちにそうしてもらった経緯がありますから」

”ポリバラン”な生き方

 創作へのインスピレーションは「回りにあるものすべて」と語る遠藤は、自身のことをダンサー・振付家としてどう分析しているのだろうか。
「『ポリバラン』でしょうか。フランス語でいい意味でいろんな物の見方、考え方が出来、それを行動に移せるといったニュアンスなのですが、スポンジ的に吸収できるところはあるかもしれません。
 ダメと決めてかからず、とにかくやってみる考え方があります。興味があることを一つずつこなしてそれが『シュマン』になる(フランス語で「道」の意)。やってみたことないことを色々挑戦してみたい」

 そして、本公演〈JAPON dance project 2016〉のサブタイトルに『Move / Still(ムーブ/スティル)』と付けられたが、その思いは?
「色々な意味がありますが、相反する動と静。ダンスに関わりがある言葉のひとつ。ムーブ/スティルは、『まだ動いているの?/動けるの?』をキーワードにして試行錯誤しています。ダンサーたちの生き様が出ればいいなと。音楽は児玉くんが楽曲を集めたりコラージュしてくれています。面白いだけでなく、なにか心に残るものを創りたいと思います」

 まだ2回目を迎えるシリーズであるが、今後も大いに発展しそうな〈JAPON dance project〉。これからどんな方向性を見ているのだろうか。
「海外での舞台もあり得ます。可能性はいつもある」

 

C)Takao Sakai

C)Takao Sakai

 

==プロフィール==
 執行バレエスタジオにてバレエを始める。ロビンス「牧神の午後」にて抜擢。スターダンサーズ・バレエ団入団。1994年文化庁在外 研修員としてオーストラリア・バレエ団入団。1999年ベルギーのコンテンポラリーダンス「シャルルロワ・ダンス」に入団。ジュニア・カンパニー「パソレイユ」に振付・指導する。2005年フランス国立マルセイユ・バレエ団にソリストとして入団。振付作品も同バレエ団レパートリーとして各国にて上演。日本では東北大震災の後「オールニッポン・バレエガラ」の発起人として世界で活躍するダンサーを集めたチャリティー公演を東京、横浜、福島で行った。2013年「JAPON dance project」を結成。2015年より「横浜バレエフェスティバル」の芸術監督を勤める。1998年村松賞受賞。

公演情報

ジャポン・ダンス・プロジェクト 2016 ムーブ/スティル
2016年8/27(土)、28(日)新国立劇場中劇場
http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/151224_007944.html