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INTERVIEW

森山開次Moriyama Kaiji

振付家・ダンサー

「一つひとつの出会いの中で導かれてここにいる」

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   来る10月に、ソロ公演『KATANA』の再演が決定した。2006年の初演でアメリカのNew York Times 紙に「驚異のダンサー」と評され、2007 年イタリアのヴェネチアビエンナーレに招聘される。それから10年の月日を経て、ふたたびこの作品に挑む心境を伺ってみた。

10年ぶりの再会

 『KATANA』は自分のカラーを大きく転換した作品です。時を経てまた踊りたいと思い入れが強かったので、実現できてすごく嬉しい。
 もともとは違う舞台で刀の役を演じたのがきっかけで、振付も担当しました。その後、オリジナルの小作品をつくり、ニューヨークを経て2006年に日本で完全版を上演しました。刀というテーマに出会ってそこから育ててきた作品です。初演のときに、10年後にもう一度踊ったときにどういうことになるのか、挑戦する楽しみがあるとそのときから感じていました」
 
 初演のときから楽しみにしていたという『KATANA』は、どんな”再会”になるのだろうか。
 「まず10年前の自分に向き合ってみるところからはじめます。10年前に創作した振付に向き合ってどう感じるのか。その先に何を膨らませてゆくのか、自分の中から生まれ出てくる”贅沢さ”を感じたい。独りよがりの作品になってはいけないのですが、自分の中から創ってゆく”醍醐味”を存分に味わっていきたい」

苦悩を受け入れる

 創作過程を「贅沢」と「醍醐味」と言い切れてしまうところに、アーティストとしての素質を感じる。
第一線で活躍してきたなかで、苦悩や困難などに直面したことはあったのだろうか。
「苦しいことはいつでもあります。それが当たり前なので。その中でも怪我したことが一番苦しかったことですね。怪我した自分も悔しかったですし、キャパを超えることをしてきてしまった。それでも舞台に立たなくてはいけない。10年間はずっと怪我との闘いでもありました。
 ダンサーは皆そういう苦悩を抱えていると思いますが、僕は、苦しみの感情を前向きに捉えるようにしています。苦悩を受け入れるというんでしょうか、楽しもうとしています。あー、また来たかー!という感じで(笑)」

 しかしそもそも、どういうきっかけで振付をするようになったのだろうか?
「振付への興味は最初から持っていて、こうしてみたらどうなのだろうという好奇心は尽きなかったですね。自己表現をしたい気持ちは子供のときからあったと思います。ダンスを習い始めて興味と疑問が同時に沸いたというのでしょうか。西洋人との身体の違いや、踊りの文化に入ってみて日本人としてのアイデンティティに深い関心を持つようになりました。
 色々模索してみたい探究心が生まれて、その延長上にコンテンポラリーダンスがあった。創作をしてゆく喜びを自然と見出していったんだと思います」

 その言葉通りに創作は振付だけでなく、舞台美術のオブジェやデッサン画まで手がける。初演の『KATANA』では、椿の造花をめしべやおしべを付けて自ら一つひとつ手作りした。
「モノ作りをすることがもともとの自分の原点であり、その先にダンスがあった感覚なので創作と踊ることは僕の中ではいっしょの感覚です。能の世界でも踊り手の方も皆制作に関わっていらっしゃるので、日本にもともとあった文化だと思います」

『KATANA』から遂げた変化

 かつてのインタビューで「進化だけでな変化もしたい」と語っていたが、『KATANA』の初演から10年、どんな「変化」があったのだろうか。
「身体的・肉体的には衰えた部分があると思いますが、伸びた部分の両方があります。以前は、「動きすぎ」と言われても止まっていられなかった。もっと動ける自分を見せたかったのもありますが、自分で分かっていても止まっていられなかった。それは精神的にも肉体的にも未熟だったと思います。
 いまは「静」の部分をもっと持てるようになって、静止できる忍耐力も備わりました。筋力的以外にも、力を抜いて無駄なく動ける感覚を得られたと思います。相反するものが共存する、両方を持つことの大切さを実感しています。刀は切るための道具であり「強さ」の象徴でもありますが、一方で「儚さ」の精神がある。真逆のものを顧みる余裕を持ちたいですね」
 一方で変わらないものは?
「稽古場で悩んでいる姿はずっと変わらないですね。ひとりでずっと数時間稽古していてもまったく苦にならない。楽しさと喜びの感覚はいまでも変わっていない。無理してケガしちゃうところも変わっていないかな(笑)」

「ダンサーになったのも、なろうとしたのではなく、導いてもらった。いつの間にかそこにいた感覚です」と語る森山には、なんの気負いも感じられず、「ひょっとしたら来年違うことをしているかもしれない」と、どこまでも自然体である。これから先、森山開次には何が待ち受けているのだろう。
「漠然とした夢は色々あるのですが、大晦日にオーケストラの真ん中で踊る祭り事のようなものも面白いかもしれない。これから先どんな出会いがあるのか楽しみにしてゆきたいですね。時の流れの中で導かれてゆくように」

 

C)Takao Sakai

C)Takao Sakai

==プロフィール==
 1999年以降、山崎広太・香瑠鼓ほかコンテンポラリーダンスの国内・海外公演に出演するかたわら、幅広いジャンルで振付を担当。2001年ソロ活動開始。2005年1月「驚異のダンサーによる驚くべきダンス」(米・New York Times紙)と評されたソロ作品『KATANA』を、完全版として2006年9月日本初演。東京・札幌 ・名古屋・大阪・広島の全国5都市ツアーを敢行、全公演ソールドアウトとなる。ダンス公演のみならず、演劇、ミュージカル、クラブやストリートなど劇場を飛び出してのパフォ ーマンス、2005年4月にはソロ公演『Namida君』上演と同時に自作の絵本を発表するなど、幅広い媒体での表現活動を行っている。

公演情報

森山開次ソロダンス『KATANA』
東京公演:2016年10/7(金)~9(日)世田谷パブリックシアター
広島公演:2016年10/15(土)MSアステールプラザ中ホール
http://www.kaijimoriyama.com/cgi-bin/schedule/topics.cgi