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INTERVIEW

小野絢子Ono Ayako

新国立劇場バレエ団プリンシパル

「落ち込むことが日常です」

新国立劇場バレエ団ソリストとして2007年に入団、翌年早くもデヴィッド・ビントレー振付『アラジン』で主役に抜擢。その後プリンシパルに昇格してからは、ほぼすべてのレパートリー作品に主演している小野絢子。バレエダンサー以外の道は考えてなかったと言うが、大学で歴史の勉強をすることにも興味があったという。「人間観察も好き」と語るバレリーナの素顔に迫る。

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  2011年にマクミラン版『ロメオとジュリエット』で初役デビューし、デニス・マトヴィエンコ(現マリインスキー・バレエゲスト・プリンシパル)と共演。外国人ダンサーと組むのも、ゲストダンサーと踊るのもはじめての経験となった。いつかジュリエットを踊りたいという夢が叶ったが、舞台直後はどんな感情を抱いたのだろうか。

本番の醍醐味

 「それがまったく覚えていなくて……。この作品に限らず、舞台直後は何も考えていません。少し時間が経って反省点が出てきます。この役が出来て幸せだったと浸る感覚よりは、こうしたかったという思いの方が強いです」

 それでも初役の『ロメオとジュリエット』はかなりの高評を得た。
「もちろん、リハーサル中も本番さながらに挑んでいるのですが、やはり本番で舞台を生きてみてはじめて不思議と見えてくるものは多いです。
 3幕のシーンで踊らないでベットに座っている場面があるのですが、そのときジュリエットの半生が自然と頭の中に蘇ってきました。舞台の設定では数日しか描かれていないのですが、ジュリエットのこれまでの人生を反芻している自分がいました」

 初役から5年経過しているが、再演に向けてこうしたいなどの思いはあるのだろうか。
「余計な思いは持ち込みません。前回よりよくあるべきではありますが、前回の続きというより新しく作品に取り組む気持ちです」

 はじめてゲストダンサーと組んだときの感想は?
「同じバレエ団員なら、数ヶ月間一から創り上げてゆく時間があるのですが、ゲストダンサーとは数日間で創り上げないといけない。もしかしたら相性が良くないこともあるかもしれませんので(笑)、リハーサルするまではすごく不安でした。それまでは自分で役を創り上げて、相手にぶつかってゆく勇気が試されると思います。
 マトヴィエンコさんはとてもパッションがあるダンサーで、ジュリエットを振り回すムーブメント(振付)では、通常の3倍ぐらい大きく回される感じでパワフルでした。こんなに移動するんだ!とか(笑)」

 今回ロメオを踊るプリンシパル・福岡雄大については、
「福岡さんも別の意味でパッションが溢れ出るダンサーですが(笑)、綿密に役作りをするタイプです。マイムの動きで、どちらが先に話しかけてどちらが受けるかというちょっとしたタイミングや内容についても話し合っています」

 現在リハーサル真っ只中だが、前回の舞台との違いや新しい発見などは?
「経験を積むにつれて、自分を外からも見ることができるようになるのかなと思います。自分はどうあるべきかという視点が必要になってくると思いますね。伝わらなかったら意味がない。そのバランスがすごく難しい」

落ち込むことが日常

 以前、”小野絢子を観にいきたいというよりは、作品を観に来て欲しい”と語っていたが、ダンサーには少ないタイプでは? との問いに、「私を見て欲しいというなら、自分で自分のための作品を創ればいいと思います。役名は要らない」ときっぱり。

 自身の個性についてはどう感じているのだろう。
「個性は出そうとして出すものではないと思います。例えば同じような設定をもらい、ある程度制約がある中でなにか違う印象を与える。最後に出てきたものが個性。自分の個性は言えないです。演出家・振付家がこういうものを創りたいという思いに沿いたい」

 2014年の『カルミナ・ブラーナ』の女神フォルトゥナ役について、”あれほど出来ないと思うことが楽しい”という発言もあった。
「出来なかったら普通マズイ!と思いますよね。でもこんな役を私にやらせてもらえるんだというのが嬉しくて。そのときはポジティブに捉えることが出来ました。大人の女性を演じさせてもらえて楽しかった」

 女神フォルトゥナ役で一番困難だった点は?
「存在することそのものです。最初から舞台の中心に立っているので、どのように存在しなくてはいけないのか、ということがとても難しくて。貫禄が出せる歳でもないし、どうやって立っていたらいいのかも分からない。
 ダンサーは毎日落ち込むのが普通だと思います。壁はダンサーにとって日常茶飯事。毎日レッスンで落ち込む。苦手のパもありますし、『あー、今日も出来なかった』とか、その事実を受け止めるだけです。日々のレッスンに打ち込むしかないですね」

クリエーションの愉しさ

 そう謙遜するが、どんな役でもスムーズに難なくこなしているように見える。
「いいえ、難ありです!(笑)。舞台で転んだことも3回ぐらいあります。それもぜんぶセンターで転んでいます。『眠れる森の美女』にフロリナ王女で出演したとき、上手と下手を間違えてはけてしまい、舞台裏を必死で走りました。踊るより疲労感があったかも(笑)」

 小野のユニークなところは”運動が苦手”と公言している点である。
「体育の成績が悪かったんです。鉄棒もダメで走るのも遅いし、球技も2回ぐらい剥離骨折しました」

 しかし、バレエ界では素晴らしい活躍を見せている。これまでスランプの経験はあるのだろうか。
「たぶんスランプというのは、今まで良い状態で来た人が経験するのであって、私の場合はそんなに上手ではなかったですし、周りでは15歳ぐらいで世界中のコンクールに出ているレベルの高いダンサーがたくさんいた。私はプロを志したのもひとより遅い方でしたから。
 クリエーションが好きですね。振付家とスタジオで、作品が生まれてゆく過程を目の前で体感するのは、本番よりもリハーサルが楽しいと感じるときもあります。最初のクリエーションは、ビントレーさんの『アラジン』で経験しました。その後は『バゴダの王子』や〈ジャポン・ダンス・プロジェクト〉などですが、振付家の頭の中身を想像するのも楽しいです。
 振付をしたいとは今は思わないですね。創作に参加するのは好きですが、私は踊る方でいいです(笑)。頂く役はなんでもやりたいです」

 

C) Takao Sakai

C) Takao Sakai

==プロフィール==
 小林紀子、パトリック・アルモン、牧阿佐美に師事。小林紀子バレエアカデミー、新国立劇場バレエ研修所・第3期修了生を経て、2007年新国立劇場バレエ団ソリストとして入団。入団直後に『アラジン』の主役に抜擢。『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』『白鳥の湖』『シンデレラ』『カルミナ・ブラーナ』『パゴダの王子』『シルヴィア』『こうもり』『コッペリア』『火の鳥』などで数多くの作品で主役を踊る。11年プリンシパルに昇格。04年アデリン・ジェニー国際バレエコンクール金賞、10年にスワン新人賞、11年第61回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第42回舞踊批評家協会新人賞。14年に第30回服部智恵子賞受賞。

公演情報

新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』
2016年10/29(土)~11/5(土) 新国立劇場 オペラパレス
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/romeo_and_juliet/